ビタミンDだけでは不十分? ビタミンAとの"パートナーシップ"ががん予防のカギだった
- Tanaka Ryoto
- 2月17日
- 読了時間: 6分
「ビタミンDはがん予防に良い」—健康意識の高い方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
実際、これまで多くの研究でビタミンDのがん予防効果が示唆されてきました。しかし、「サプリメントを摂っても効果があった人となかった人がいる」という矛盾した結果も報告されており、研究者たちの間でも長年の謎でした。
2026年1月、東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授らの研究グループが、その謎を解くひとつの重要な答えを発表しました。それは、ビタミンDが力を発揮するためには、ビタミンAという"パートナー"が適切な状態にあることが必要だ、というものです。
今回は、ホリスティックヘルスコーチの視点から、この最新研究の意味と、私たちの日常生活にどう活かせるかをお伝えします。
研究の概要:AMATERASU試験とは
この研究は「AMATERASU ランダム化比較試験」と呼ばれる臨床試験の追加解析です。2010年から2018年にかけて、手術を受けたStage I〜IIIの消化器がん(食道から直腸まで)の患者さん417名を対象に実施されました。
患者さんはビタミンD3サプリメント(1日2,000 IU)を摂取するグループとプラセボ(偽薬)を摂取するグループに無作為に分けられ、がんの再発や死亡が長期にわたって追跡されました。
2019年に世界最高峰の医学雑誌『JAMA』に掲載された主解析では、全体としては明確な差が見られませんでした。しかし、血中ビタミンD濃度が「中等度」の患者さんでは再発リスクが半分以下になるという注目すべき結果が出ていたのです。
「なぜ中等度の患者さんだけに効果が強く現れたのか?」—この疑問が、今回の新たな発見につながりました。
新発見:ビタミンDとビタミンAの"ヘテロ二量体"
研究グループが着目したのは、ビタミンDが細胞内で働くメカニズムです。
ビタミンDが体内で機能するとき、ビタミンD受容体(VDR)はビタミンA受容体(RXR)と結合して「ヘテロ二量体」というペアを形成します。つまり、ビタミンDが細胞に指令を出すためには、ビタミンAの受容体がパートナーとして不可欠なのです。
これは分子レベルの話ですが、わかりやすく言えば、ビタミンDは「鍵」、ビタミンA受容体は「鍵穴」のような関係です。どれだけ良い鍵を持っていても、鍵穴が合わなければドアは開きません。

研究結果のポイント
今回の解析では、363名の患者さんの血液中ビタミンA濃度とビタミンDサプリメントの効果の関係が詳しく調べられました。主な結果をお伝えします。
1. ビタミンAが適切な範囲にある患者さんで、ビタミンDの効果が最大化
血清ビタミンA濃度が「中〜高値」の至適範囲にあった患者さんでは、ビタミンDサプリメントを摂取したグループの5年無再発生存率が81.4%だったのに対し、プラセボグループでは54.9%。再発・死亡リスクが約69%も減少するという顕著な効果が確認されました。
2. ビタミンA濃度が低すぎても高すぎてもダメ
興味深いことに、ビタミンA濃度が極端に低い群や逆に非常に高い群では、ビタミンDサプリメントの効果が認められませんでした。これは、栄養素には「適切な範囲」が存在し、多ければ多いほど良いというわけではないことを示しています。
3. ビタミンAとビタミンDの血中濃度には正の相関がある
両方のビタミンの血中濃度には統計的に有意な正の相関が見られ、片方が十分な人はもう片方も十分である傾向がありました。日々の食事や生活習慣が両方の栄養素に影響している可能性が考えられます。

ホリスティックヘルスコーチとしての視点
この研究結果は、私がヘルスコーチとして日頃からお伝えしていることを裏付けるものです。それは、「単一の栄養素だけに注目するのではなく、栄養素同士のバランスと相互作用を考える」 ことの大切さです。
栄養素は"チーム"で働いている
ビタミンDのサプリメントだけを大量に摂っても、パートナーであるビタミンAの状態が適切でなければ十分な効果が得られない。これは、まさに栄養素がチームとして働いていることの証拠です。
同じことは他の栄養素にも言えます。カルシウムにはビタミンDとビタミンKが、鉄にはビタミンCが、マグネシウムにはビタミンB6が、それぞれ吸収や機能発揮において重要な役割を果たしています。
「適度」がカギ
今回の研究で印象的なのは、ビタミンAが「多ければ多いほどよい」わけではなかったという点です。適切な範囲にあることが重要で、極端に高い値でも効果が減弱しました。
これは健康全般に通じる考え方です。栄養も運動も睡眠も、極端を避け、自分にとっての「ちょうどいい」を見つけることが、長期的な健康の基盤となります。
ちなみに私のビタミンD(25-OHビタミンD)の値は135ng/mLとかなり高値でした。体感としてはデメリットは感じませんが、ビタミンDのサプリメントのペースは調整するようアドバイスを受けています。
まず食事から、そして必要に応じてサプリメントを
ビタミンDは日光浴や鮭・きのこ類から、ビタミンAはレバー・にんじん・ほうれん草などの緑黄色野菜から摂取できます。まずは日々の食事で幅広い栄養素を摂ることを心がけ、不足がある場合に医療者と相談のうえでサプリメントを検討するのが望ましいアプローチです。
日常生活で意識したい3つのこと
① バランスの良い食事で「ビタミンチーム」を整える
特定のサプリメントに頼る前に、色とりどりの野菜・果物、魚、卵、きのこ類などを取り入れた食事を心がけましょう。ビタミンDもAも、そして他の栄養素も、食事から自然に摂ることで体内でのバランスが保たれやすくなります。
② 適度な日光浴を忘れずに
ビタミンDは「太陽のビタミン」とも呼ばれ、紫外線を浴びることで皮膚で合成されます。毎日15〜20分程度の日光浴を習慣にすることで、ビタミンDの体内合成を促すことができます。特に冬場や屋内で過ごすことが多い方は意識的に取り入れてみてください。
③ 定期的な血液検査で自分の状態を知る
今回の研究が教えてくれたのは、「適切な範囲」に栄養素の値を保つことの重要性です。ビタミンDやビタミンAの血中濃度は血液検査で測定できます。自分の体の状態を客観的に把握し、過不足を知ることが、効果的な健康管理の第一歩です。

まとめ
東京慈恵会医科大学の最新研究は、ビタミンDのがん予防効果がビタミンAの状態に左右されるという臨床的エビデンスを示しました。
この発見は、「単一の栄養素ではなく、栄養素全体のバランスが健康を左右する」という考え方の正しさを科学的に裏付けるものだと感じています。
ただし、この研究はあくまで消化器がん患者さんを対象とした事後解析であり、すべての人に同じ効果があると断定できるものではありません。がん治療中の方は、必ず主治医と相談のうえで栄養管理を行ってください。
健康は、日々の小さな積み重ねの中にあります。今日からできることとして、まずは食卓に彩り豊かな食材を一品加えてみてはいかがでしょうか。
本記事を読んでいただき、ありがとうございます。
皆様の人生により豊かになることを願っております。
参考文献
Kohmura T, Ohdaira H, Suzuki Y, Urashima M. "Effect Modification by Serum Vitamin A Levels on the Association Between Vitamin D and Relapse or Death in Patients with Digestive Tract Cancer: A Post Hoc Analysis of the AMATERASU Randomized Clinical Trial." Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention (2026). DOI: 10.1158/1055-9965.EPI-25-1427
東京慈恵会医科大学 プレスリリース(2026年2月10日)





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